AREJ mail magazine No.6 2014/2/13

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【1】 『スペイン・ロマネスク美術 入門』第四回のご案内
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 来月より『スペイン・ロマネスク美術 入門(全6回)』の後半が
 始まります。
 昨年の講座で時代背景とプレロマネスクの流れをふまえたうえで、
 いよいよロマネスクの世界に分け入ります。
 
 本日より講座申込みを開始しました。

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 『スペイン・ロマネスク美術 入門』―Iniciación al Arte Románico Español
 
 ★第四回 ロマネスク美術 Arte románico español(11〜12世紀)
      Ⅰ.建築 arquitectura

 日 時:2014年3月18日(火) 
 講 師:勝峰 昭
 会 場:在東京スペイン大使館オーディトリアム(東京都港区六本木1-3-29)
 時 間:18:30〜20:30
 参加費:無料(資料代別途:500円)
 定 員:40名(先着順)
 後 援:スペイン大使館

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 以下のページよりお申込みください。
 締め切りは《 3月9日まで 》です。

 フォーム送信後、自動返信メールが届きます。
 もし自動返信メールが届かない場合は、お申し込みが完了していない
 可能性があります。
 その場合はお手数ですが、romanico.espanol@gmail.com あるいはHPの
 お問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします。

 *講座当日、受付などお手伝いいただける方を募集しています。
 事務局 romanico.espanol@gmail.com までご連絡ください。
 
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【2】 勝峰 昭のコラム: 第五回 「寸描―スペイン・ロマネスク木版画展」
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 昨年12月、木版画家 香取慶子の『スペイン・ロマネスクの世界』展(展示作品
 20点)がスペイン大使館の図書室で一日だけ開かれた。
 私の友人であるスペインのAmigos del Románico(ロマネスク友の会、会員数
 約1000人)のオラニェタ会長の講演会との同時開催であった。

 何しろ我が国で最初の試みでもあったので、内心その反響が気になっていたが、
 それも危惧に終わった。身贔屓かもしれないが、ある種の感動を覚えさせる展示
 会で、好評を得た。

 オラニェタ氏は、木版画とロマネスクという組み合わせが、日本とスペインを繋ぐ
 一つの手段として、その内容とともに秀逸であったと開催を祝ってくれたが、ここ
 で私はAREJ理事長として、少し感想を述べておきたい:

 ◯抽象性
 ロマネスク美術とくに絵画の領域では「抽象性」を大事にする。先行するローマ美
 術や、後に続くゴシック美術の「写実性」と本質的に異なる。これはロマネスク美
 術が究極的には、目に見えない世界(神の世界)を求めるために、具体性・写実性
 を忌避したからである。

 今回展示された作品には、この意味ですべてに抽象性が漂う。会場入り口外側の
 「大道芸人」をモチーフにした“写本の大文字”、そして開場入口を入ってすぐの
 所を飾った4点の「クリスモン」(再臨のキリスト)がそうであった。

 ◯底抜けの非現実性
 真正面奥にあった「神の手」「神の眼」「七つの目をもつ小羊」三部作は、
 “ヨハネの黙示録”の一節の意味を目だけで表現したもので神秘的である。
 とくにこの時代のキリストの目は、決して愛に溢れた優しいまなざしをしていない。
 容赦ない懲悪の怖い眼である。世の中のことをすべて見逃さない強い意志の眼とも
 云えよう。

 出口に近いところにあった「1月のカレンダー」はひとつの胴体から首が二つ出て、
 過ぎし年と来るべき年の境目にいる人。いわゆる“時”の流れをロマネスク時代は、
 過去-現在-未来に明確に認識していたので、こういう構図が成り立ったのである。
 つまり動的な流れとして時を捉えている。それにしてもこの人像の“デフォルメ”を
 意に介さない自由な手法は西欧中世の美術ではロマネスクしかない。

 ◯仮象と弁証法的手法
 右手奥にあった「モンセラの聖母マリア」の黒い横顔は美しい。カタルーニャの
 女性の典型的な容貌の一つである。11世紀のものとしてはやや写実的である。
 右側にこの場特有の“奇岩”、左の上方には聖堂の塔が描かれている。この配置の
 設定は非現実的であり寧ろ“仮象”(主観と客観の間に浮かぶ幻のような存在)である。
 元々こういった奇岩は“悪魔の象徴”であり、作者はこれと対置するものとして
 “聖なるもの”=次元を高めて、聖堂を空中に置いている。弁証法的に云えば、この
 二つの対立概念の止揚されるところは、崇高な聖なる存在=神への接近であろう。
 神の世界に近づきたい願望を秘めた、きわめて濃厚にスペイン・ロマネスク的である。

 ◯象徴
 西欧のロマネスク美術には、知的な表現手法として直接的表現を避け、象徴を多用した。
 「Lux Mundi」というタイトルの燭台をもつマリア(タウイの壁画Pantocrátorの
 下部の絵を抽象化したもの)があったが、これはキリストの再臨の時に“吾は世の光”と
 云ったが、この燭(火)は世の光の象徴と解される。新約聖書の世界の抽象的・象徴的
 情景である。

 何れも寸描したが、あくまで私の見解である。展示された他の作品にも、ロマネスク的
 手法が駆使されていた。
 木版画の和紙とロマネスクというテーマの組み合わせが、すべての作品に独特の趣を
 もたらしている。

 香取慶子『スペイン・ロマネスクの世界』展の写真はこちらからご覧になれます。

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【3】 AREJ会員情報
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 浅井一輝 写真展 スペイン風景『イベリアを巡る風』

 会 場:プロモ・アルテギャラリー
     東京都渋谷区神宮前5-51-3 
     表参道駅紀伊国屋方面出口を出て246を渋谷方面に歩き、MUJIの角を
     右折したらすぐ左側(表参道駅から徒歩3分)
     http://bit.ly/1bYRE2A
     
 期 間:2014年4月24日(木)~4月29日(火) 
     11:00~19:00(最終日は17:00まで) 入場無料

 AREJ会員の写真家・浅井一輝さんの個展です。
 この写真展に寄せて、浅井さんが近年通いつめてらっしゃるというガリシア
 内陸部リベイラ・サクラの修道院建築を以下にご紹介いただきました。

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 私が近年殊の他魅せられ通い詰めている場所で、スペイン北西部ガリシア地方の
 内陸部に、聖なる岸辺「リベイラ・サクラ」と呼ばれている地域があります。
 ガリシアとポルトガル国境を流れるミーニョ河の上流とその支流シル川との一帯を
 指し、1124年この地に設立されたモンテデラーモ修道院の管轄地域を定める文書に、
 “Rivoyra Sacrata”と名付けたのが始まりだそうです。

 もともとこの地域には6世紀頃から幾つもの修道院が定着していたそうですが、
 ガリシア地方で最も古い、San Pedro de Rocas 修道院跡の起源は西暦573年。
 それ故に美術的見地よりも人類学的に重要視されているという程です。
 イスラム教徒の侵入によりうち捨てられた後、9世紀に入って猪狩りをしていた
 騎士により発見されたと言い伝えられており、11世紀には修道院が設立されました。
 現在目にすることが出来るのは、高さ14mもの大岩の上に鐘が設置された鐘楼と、
 最も古い6世紀に造られたという、岩山を水平に掘り抜いた教会。
 内部の壁や床には数多くの納骨スペースが残っており、鐘楼の裏側壁面や教会との
 間の地面からも多くの墓穴が発見されていて、かつてその辺りに修道院の
 内庭回廊があったと推測されています。

 もう1つは、Santa Cristina de Ribas de Sil 修道院跡。 
 シル川の川面に近い静寂に満ちた林の中にひっそりと佇んでいるのが、私には
 堪らない魅力です。
 ここの起源は10世紀後半、ガリシア地方でも最も保存状態の良いロマネスク様式の
 建築の1つと言われ、教会には見事なバラ窓。
 修道院部分への入り口に独特の半円形飾りを持つアーチがあり中へ入るとそこは、
 16世紀ルネサンス様式で改装された内庭回廊の内の2翼のみが列柱廊の状態で保存
 されています。
 秋になるとまわりの栗林がちょうど実を落とし、一面毬栗の絨毯の中を朝早くに
 散策する気持ち良さはとても言い表せません。

 この地での滞在に欠かせないのは、豪華なホテル(パラドール)に改装された 
 Santo Estevo 修道院。
 やはり6世紀頃から修道士の入植が始まったのを起源にしていて、12世紀頃の
 ロマネスク様式の教会堂と、ロマネスク、ゴシック、ルネサンスという異なる様式で
 造られた3つの大きな内庭回廊が残っています。
 この裏手にはちょっとした林が広がっていて、修道士たちの農事に使ったのであろう
 窯なども残っており、往事を偲ばせるとても貴重なものであると共に、森林浴にも
 絶好だと思います。

  
 ◯浅井さんの「リベイラ・サクラ」の写真はこちらで一部ご覧になれます。


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 今後、会員情報としてAREJメールマガジンに掲載希望の方は、事務局まで
 ご一報ください。
 (掲載の時期・有無についてはご希望に沿えないこともあります)


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【4】 関連書籍販売のご案内
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 AREJではスペイン・ロマネスク美術の関連書籍を会員価格(消費税分サービス)
 にて販売しております。
 日本国内は送料無料。また、講座にご参加の方は会場でのお引き渡しが
 可能です。
 
 『イスパニア・ロマネスク美術』勝峰 昭(光陽出版社 2008年)
  販売価格 6,300円(税込)→会員価格 6,000円
 
 『神の美術 イスパニア・ロマネスクの世界』勝峰 昭(光陽出版社 2011年)
  販売価格 4,200円(税込)→会員価格 4,000円
 
  書籍に関する詳しいご案内はこちらよりご覧ください。


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【5】 ウェブサイト更新情報
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 ◯スペインのFco Javier Ocaña Eiroa先生よりご提供いただいた写真データを
 Photo Galleryで公開しています(今後も随時更新します)

 ◯2月2日にAREJ設立一周年を記念して茶話会を行いました

 ◯キリスト教新聞、神学会報でAREJが紹介されています。


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 このAREJ MAIL MAGAZINEは、スペイン・ロマネスク・アカデミー(日本)の
 会員の皆様に向けて、配信しております。

  AREJ mail magazine No.6
  □編集・発行 : スペイン・ロマネスク・アカデミー(日本)事務局
  □発行日   : 2014年2月13日
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  □理事長ブログ: http://blogs.yahoo.co.jp/elromanicoes

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